パンデミックの歴史(近代)

スペイン風邪に学ぶ ~100 年前の教訓~

今からちょうど 100 年前、1918 年から3年間にわたり世界中で猛威を振るった流行性感冒肺炎(インフルエンザ)は、元々アメリカの米軍キャンプで発生し、欧州へ派遣された兵士を介して世界へ広まったとされています。当時は第一次大戦中であり、どの国も戦局への影響を考えて情報統制を行い自国の感染拡大を隠していました。

実際、世界中で戦死者より多くの軍人がこのインフルエンザで亡くなっているのであるが(アメリカ軍だけで戦死者5万人に対してインフルエンザは5万7千人)、中立国であったスペインが、自国の感染拡大を報じたことから、この新型インフルエンザに“スペイン風邪”の名前が付くこととなりました。決してスペインが震源地ではありません。世界中では、5億人(当時の世界人口の1/3)が感染し、そのうち亡くなった人は4千万から1億人ともいわれています。

日本においても飛沫感染については認知されており、学校での指導や街のポスターなどを使って、マスクやうがいについて強く奨励されていました。しかし、なぜか手洗いについては徹底されいませんでした。理由は、現代のように気軽に流水と石鹸を使うことができなかった当時の水道事情があるといわれています。

スペイン風邪の被害が収まるまで3年かかったというのは定説になっています。衛生管理と共に、これだけ被害が生まれて、フランス革命以降育っていた人権・民族自決という概念が欧米を中心に発展して・全国民の総力戦を戦ったことによって男女同権という意識も芽生えたともいわれています。

パンデミィックや世界大戦が重なって大きな時代の変化を迎え次の大戦を経て人権・民主主義という現代に繋がる価値観が生まれるきっかけになったのではないでしょうか。

しかしながら、100年後経った私たちだからそのように考えることが出来ますが、当時の方々は今の我々と同じ心の状況で先を見通せることは困難だったと思います。次回最終回ですが、コロナウィルスから次の価値観に繋がる気づきを考えてみたいと思います。よろしくお願いします。